お知らせ
極真館全日本選手権大会が近づいてきました。各道場では、各選手の稽古の仕上げを行っていることと思います。素晴らしい大会になることを期待しています。
大会での組手、型、棒術などの試合は、ルールに基づいた競技です。競技である以上、ルールをよく理解し、ルールを尊重した試合をする必要があります。
しかし、ルールを利用することにのみ特化した戦い方に陥ることは、極真館の目指す武道空手の方向性から離れてしまう危険性もはらんでいます。盧山会長の昔から教えに「相手は素手とは限らない、相手は一人とは限らない」ということばがあります。私は常にこれを念頭に稽古し、指導をしてきました。試合に勝つことは大切です。そのための努力は並大抵のことではありません。それでも私たちは、「武道空手」であることにこだわっていきたいと思うのです。
組手においても、「反則をしない」ことはルールがある以上当然のことですが、「反則をさせない」ことも同じように大切な要素だと思うのです。顔面を叩かれない、叩かせない戦い方を考えてみましょう。構えであったり、間合いであったり、いろいろと気づくことがあるはずです。金的蹴りや掴み、押しもそうです。
型、棒術においては、まずは「動作の正確さ」が最重要です。最近の選手は全体的に「上手」になっていると思いますが、「正しい動作」という点では十分とは言えない選手が多いです。正しい動作だからこそ「使える技術」となるのですから、見た目の速さとか力強さなどは二の次なのですね。むしろ、技と技のつなぎの部分や重心移動、体軸の正確さなどのほうが大切な部分なのです。この点を指導者も選手も審判もよく理解しなければなりません。
実際に型の採点をしてみましょう。型は10点満点で6点が基準です。ここに「動作の正確さ」「技の緩急」「力の強弱」「息の調整」の4つの観点でそれぞれ1点ずつの範囲で加点します。逆によくない場合は減点となり、それらの合計が得点となります。ある選手の型が、スピードもあり、一つ一つの技もしっかりしているとします。気合も大きく迫力があります。その場合は4つの観点のそれぞれで加点があり、7,5点になりました。しかし、下段払いの引手の位置が連続して悪く、中段前蹴りが上段になっていました。程度にもよりますが、下段払いは連続しているので0,5点、前蹴りは0,2点のそれぞれ減点となるでしょう。そうなると合計点は6,8点となります。このようにあら捜しをするわけではありませんが、明らかに正確さを欠く動作については減点をせざるを得ません。組手における反則と同じであると理解してください。撃砕小という予選型がありますが、下段払いが6回、前屈立の逆突きが6回でてきます。それぞれ同じ間違いをすればかなりの減点になってしまいますね。どちらも基本の動作です。結局は基本稽古や移動稽古を普段からどれだけ正確に行っているかの問題なのです。気合にしても、大きな声を出したとしても技と合っていなければ不正確となってしまいます。
また、大会の規模や型の種類によって「ボーナス点」などもありません。世界大会だからと言って8点台が続出することなどありません。どのような大会でもダメなものはダメです。また、観空や五十四歩など長い型を演武しただけで点数が高くなることもありません。むしろ「難度」だけでいったら最破のほうがはるかに難しい型だと思います。また、自分の思い込みによる動作の間違いも多くみられます。正しい動作を確認することもよい評価を得られる確実な方法です。いくら練習をしても間違った動作は間違った動作でしかないのですから。正しい採点こそ、本当の意味で型競技の技術向上につながるのです。
極真館の目指す武道空手とは、どのような状況においても「一撃で相手を倒す空手」であると思います。そしてその技術は、付け焼刃や小手先のものではなく、基本の修練の延長にあるものなのです。組手においても型、棒術においてもその目的を達成するために頑張りましょう。
全日本大会が素晴らしい大会になることを願っています。
館長 岡崎 寛人