極真空手道連盟 極真館

館長便り

「孝を原点とし、他を益す」
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2022-06-07 10:09:00

其の1 河童伝説

 

 河童は実在するのだろうか。

 最近、ある雑誌で「河童捕獲キット」が発売されました。緑色のリュックで、キュウリの入れ物までついている。感動しました。夕暮れの岩手県の遠野あたりの川ッ淵に、大の大人がこのリュックを背負って、野球帽をかぶり、キュウリを片手にボーッとしゃがみ込んでいたら・・・皆さんロマンを感じませんか。

 河童という妖怪は、日本全国に伝説がありますが、そのルーツは中国にあるようです。専門的な河童の歴史はわかりませんが、私は、河童の話と武道の世界の共通点に気づいたのです。

 まず、河童は実在するわけはない。「いや必ずいる。」と声高に言う人も、おそらく実際はいないけどロマンを感じていたいという願いから「信じている」というポーズになっているのでしょう。私は、それでいいと思うのです。「いないかも知れない」けれども「いるかもしれない」と思うことが楽しいのです。楽しいからカッパ色のリュックを背負って「カッパ釣り」にいっちゃうのですね。はっきり言っていてもいなくてもよいのです。そこに河童を目的として行くこと、そこでいい大人が河童釣りをすることが大切なのです。

 さて、武道の話です。いわゆる「伝説」が山ほどある世界ですね。熊笹の上に座ったとか、満願の夜にご神託があったとか、夜になると天狗が現れて技を教えてくれたとか・・・「そんなことできるわけがないだろう」と誰もが思いますよね。中国などでは、もっと現実離れした桃太郎並みの話が山ほどあるのです。しかし、やはりそれでいいのです。おそらく元になった実際の話があり、後世の人たちが開祖を神格化するためにたいそうな伝説に作り上げたのでしょう。私は、実はそこがよいのだと思っています。ありもしない、できもしない伝説が人々の夢をふくらませ、夢はやがて目標となり、努力する心の道しるべとなるのです。

 大山倍達総裁は、その空想に甘えた伝説をぶちこわして極真空手を創始しました。「空手は一撃必殺」「一発当たれば死んでしまう」だから「寸止め」というルールが生まれたときに、徹底的に鍛えた身体はどんな攻撃にも耐えられるといってそれに対抗しました。それによって絵空事の達人伝説は吹き飛んでしまいました。人は鍛えることによって超人になれる。それが極真空手なのです。私は子どもの頃にそのことに憧れて空手の道に入りました。更に盧山初雄師範と出会い、「鍛える」ということ意味を徹底的にたたき込まれ、「伝説」などどこかに吹き飛んでしまったものでした。

 ところが、実は盧山師範は、この伝説話が好きなのですね。これまでにたくさんのその手のお話を聞かせていただきました。盧山師範は、ありもしない空想話は十分に理解しているはずなのですが、夢を目標に置き換えて努力することができる人なのですね。盧山師範が「そうなんだよ」というと何でも現実に起こった出来事に思えてしまうから不思議です。私たちは、その言葉に励まされて今日まで鍛錬を続けて来られたのだと思います。

 伝説が本当か嘘かはどうでもよいのです。大事なことは、今の自分が何を目指すか、何に励んでいるかということなのです。過去の伝説をぶちこわしたはずの大山倍達総裁も、今では伝説の達人となってしまいました。何をもって伝説の達人となるかは人それぞれですし、それは後世の者が勝手に作るものなのでしょう。

 私も何か伝説となる話が残せるだろうか、と考えました。「歳の割には元気だ」くらいですかね。

 私が住まれ育った石川町には、いくつもの川が流れています。子どもの頃は川で泳いだり魚を釣ったりしていました。もしかして、子どもの頃に河童と出会っていたら、私の人生はもっと違ったものになっていたでしょうか。今思えば私自身が河童だったかも知れませんね。

 河童捕獲キット、買っちゃおうかなあ。

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